【ハラハラの展開】映画『北北西に進路を取れ』の初見感想
「サスペンス映画の神様」ことアルフレッド・ヒッチコック監督による名作『北北西に進路を取れ』(1959) を、今更ながら初めて見てみました。
どんな映画?
「カプラン」という名の別人と間違われたことで命を狙われた主人公が、
- なぜ自分はカプランと間違われたのか?
- そもそもカプランとは何者なのか?
と謎を追っていくうちに、どんどん事件の渦中に巻き込まれていってしまう…というアクションサスペンス映画です。
なんで今更見てみた?
ずばり「タイトルバックに興味があったから」です。
先日ある本を読んでいて、映画『ウエスト・サイド物語』のあの印象的なタイトルバック(無機的な図が徐々にマンハッタンの街の鳥瞰映像に変わっていくという演出)がソール・バス(1920-1996)という高名なグラフィック・デザイナーによって手掛けられていることを、恥ずかしながら初めて知りました。
その本で、同様にバスがタイトルバックを手掛けた作品として『北北西に進路を取れ』が挙げられていたので、気になった勢いのまま見てみた次第です。
公開されてから今年でちょうど60年経つ映画、こんな機会でもなければ一生見ないで過ごしちゃってたかもしれませんからね…!
見てみた感想は?
タイトルバックだけ見終えてしまえば、わたしがこの映画に興味を持った理由は解消されるはずでした。が、どうにもそうはいきませんでした。
ストーリーについて何の前知識もなく気楽に見始めたものの、序盤からどんどん不穏な方向へ事態が転がっていくので、展開に目が離せなくなります。
全ての原因であるカプランという男、早い段階でその正体が観客へは明かされます。
そしてストーリーの進行とともに主人公は「そりゃカプランと勘違いされて当然でしょう」という危なっかしい行動を重ねていってしまうので、観客のハラハラも止まらないのです。
ここぞという場面での大掛かりなアクションにも息を飲みました。
Blu-rayのパッケージにもなっている、
- 主人公に向かって何度も突撃してくる飛行機(!?)から逃げるシーン
- ラシュモア山の彫像を舞台にしたアクションシーン
はそれぞれ、映画の中盤と終盤の山場になっており、最も印象に残るシーンと言えるでしょう。
ラシュモア山に彫られた4人の大統領の像と言えば、これまで「あー!NARUTOの火影岩のやつね!」と思ってしまっていた非礼を、ヒッチコックやワシントン、ジェファソン、ルーズベルトそしてリンカーンに全力で詫びたくなりました。
火影岩は火影岩なのです、ラシュモア山は木ノ葉隠れの里ではありませんでした(当然)。この映画を見た後なら同じ話題を振られても、「あー!『北北西に進路を取れ』ね!」と全力でドヤ顔できるようになります。よっしゃ。
『North by Northwest』=『北北西に進路を取れ』?
最後に、この映画のタイトルについてです。
邦題になっている「北北西」は英語で「North Northwest」。
原題の「North by Northwest」ではないんですね。
どうやら原題のように言い表す方位は存在しないようです。
そもそも主人公が劇中で移動しているのはニューヨーク(北緯約40度)からラシュモア山(北緯約43度)なので、緯度にして3度ほどしか北上していません。
言うなればほぼ西の方角です。どう見ても北北西には進路を取っていませんね。
この謎のタイトルについては、公式側からもハッキリとした説明が無かったようなので、読んでいて面白かった考察記事を貼らせてもらいます。
『北北西に進路を取れ』 ── 存在しない方位の謎。 | げたにれの “日日是言語学”
まとめ
公開から60年が経った今見ても映画としての古さを感じさせないスピーディーでスリリングな展開で、とても楽しめました。サスペンスやミステリーあるあるですが、最後まで全部見た上でまた色々と見直したくなります。
実際わたしは一度見終わってすぐに、ヒッチコック監督の定番だというカメオ出演(出演者としてクレジットに名前を出さずにこっそり出演すること)のシーンと、怒涛の展開を見せるラストシーンとをもう一度見てしまいました。
この一作を見ると他のヒッチコック作品に対しての興味も俄然湧いてきたので、また近いうちに当たってみようと思います。